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M&A・PMI Popular Blog Post
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バリュエーションとは一般的に「企業価値算定」のことを意味しており、さらに言うと多くの場合、「株主価値(株式価値や時価総額とも言います)を算出すること」を意味します。
このシリーズでは、中小M&A(未上場株式である前提です)でのバリュエーションを「売り手自身」で(ある程度まで)行えるようになることを目指します。第一回の今回は「売り手自身によるバリュエーション実施の必要性」をご紹介します。ここでの売り手とは、M&Aの対象となる会社の株主等のオーナー(場合によっては経営者も含みます)を意味します。なお、新規上場や、ベンチャーキャピタル(VC)等からの資金調達の際のバリュエーションはこのシリーズでは範囲外としていますのでご注意ください。
多くのM&Aの実務では公認会計士、監査法人やバリュエーションの専門会社が行いますし、中小M&Aの場合ですとファイナンシャルアドバイザー(FA)、仲介会社が行うことも少なくありません。ですので、売り手自身が行う必要性はないのでは?とお考えの方もいらっしゃると思います。確かに精緻なバリュエーションはそれらの専門家に任せた方が良いですが、それでも以下のとおり売り手自身がバリュエーションを実施する必要性や、実施した方が良い理由があります。
1.「自社(対象会社)の実態」を知ることができる
バリュエーションの過程では、
自社(対象会社)の資産や負債を精査してその実態を数値化する
売上や原価・費用を修正してその実態を数値化する
といったことを行います(理由は別記事で解説予定です)。
そして、実態値や修正後の値は売り手が把握・想定していた数値と乖離があることが普通です。売り手はその乖離の理由や金額が見えるようになることを通じて自社(対象会社)の実態を知ることができるのです。
実態を知ることができれば、自社の企業価値を向上させる方法を検討したり、急に経営判断を求められた際により適切に判断ができたりする可能性が高まります。
2.M&Aのプロセスにおいて早い段階から、根拠がある「自社(対象会社)の価額」の目線を持つことができる
多くの中小M&Aの場合、売り手側は、
自分たちの手元に必要な金額をそのまま売却希望額の根拠にしてしまう
「できるだけ高く売りたい」といったような曖昧な目線のまま話を進めてしまう
自社(対象会社)の価値を過大に評価してしまう(そのことによってM&Aプロセスがとん挫してしまう)
自社(対象会社)の価値を過少に評価してしまう(そのことによってM&Aが成約した場合でも、後日後悔をしてしまう)
といったトラブルや失敗をしてしまうことがあります。しかし、売り手が自分自身でバリュエーションを実施していると、(一定の)根拠がある「自社(対象会社)の価値」の目線を持つことができるため、それらのトラブルや失敗を回避できる可能性が高まります。
3.専門家とバリュエーションのプロセスや結果について議論できるようになる
今後、「M&Aバリュエーション基礎」シリーズで詳細を解説していきますが、未上場株式のバリュエーションの具体的計算方法にはいろいろな方法があり、かつ同じ方法でも計算の前提をどう考えるかによって計算結果が大きく変わってくることがあります。もちろん、信頼できる専門家は詳細を説明してくれたり、分かりやすい報告書を用意してくれたりするでしょう。しかし、当事者自身がバリュエーションを行っていないと、専門家の実施したバリュエーションのプロセスや結果について適切な質問を投げかけたり議論したりすることは難しいと考えられます。売り手自身がバリュエーションを実施していると、そういった議論等の過程を踏むことができ、理解が深まったり、場合によっては専門家がバリュエーションの修正を行ったりすることで、売り手の納得感も高まります。
上記の「1~3」を通じて、より良いM&Aの実現可能性が高まるのです。
次回は、M&Aのバリュエーションを学ぶ前提となる用語の解説を行います。
今回から数回の間、バリュエーションの基本用語についての解説を行います。実際の計算方法などの中で説明すると文字数が多くなりすぎ分かりにくくなるため、先に解説するものです。まずはザッと読んでいただき、実際の計算方法などの解説回を読む際に適宜用語解説に戻り読み返していただければと思います。
■基本用語解説:「貸借対照表」と「企業財務の基本バランスシート」
前回説明したとおり、バリュエーションとは一般的に「企業価値算定」のことを意味しており、さらに言うと多くの場合、「株主価値(株式価値や時価総額とも言います)を算出すること」を意味します。そして、株主価値はその企業の価値や資産額から負債を差し引いた概念で表すことができるため、一般的な「貸借対照表」と「企業財務の基本バランスシート」を図のかたちで理解しておくことが必要です。
(1)貸借対照表
一般的な貸借対照表は「簿価純資産法」や「時価純資産法」でのバリュエーションを行う際の前提となる図です。
簿価純資産法は企業の貸借対照表の数値をそのまま使用するもの(つまりは純資産額を株主価値と捉えるもの)で、実際の中小M&Aではほぼ利用されることはありません。ほとんどの中小企業の貸借対照表上の資産の数値はその資産の現在における実際の価値(時価)を反映しておらず、それをそのまま採用して行われたバリュエーションの結果はM&Aなどの場面で利用するには不適切であるからです。
一方で、時価純資産法は中小M&Aでは最もよく利用されるバリュエーションの方法です。貸借対照表上の資産を個別に時価に置き換えことで時価の総資産額を把握し、そこから負債を差し引いて時価純資産を計算し、時価純資産を株主価値と考える方法です。直感的にも納得しやすい方法であると言えます。
(2)企業財務の基本バランスシート
企業財務の基本バランスシートは一般的な貸借対照表を、バリュエーションの考え方にもとづき組み替えたもので、下図のようなかたちをしています。中小M&Aでは簡略化されたものが利用されることが多いようです。バリュエーションの方法として有名な「ディスカウント・キャッシュフロー法(DCF法)」や、EV/EBITDA倍率法などを考える前提として覚えておく必要があります。
今の段階では、上記内容をざっくりと理解しておいていただければと思います。詳細は個別の用語解説や計算方法解説で触れていきます。
次回は企業財務の基本バランスシートの図の中に登場する用語について解説します。
前回に引き続き、バリュエーションの基本用語の解説です。
今回は、前回ご紹介した「企業財務の基本バランスシート」に関連する用語について解説します。
■投融資
「非事業用資産」と表記することもあります。いずれにせよ、事業に使用していない資産はすべてここに含まれると考えて実務上は差し支えありません。ほとんどの保有有価証券、他社への融資・貸付などが該当します。役職員用の保養施設などは利用実態や事業への貢献度合いに合わせて、ここに含める含めないを判断します。
■現預金
文字どおり現金と預金の合計を意味するのですが、短期売買目的の株式等を保有している場合は、短い時間で確実に現金化できると考え、現預金に含む取り扱いにすることがあります。
■事業価値
M&Aのバリュエーションで最も肝となる用語です。教科書的な定義は「その企業が稼ぎ出す将来のFCFの現在価値の合計」ですが、まずは「その会社が現在から将来にわたって稼ぎ出す(予想・計画の)キャッシュフローや利益を元に、一定の計算方法で算出される、事業そのものの価値」と理解しておいてください。「一定の計算方法」というのが、本連載での説明の中心となる類似会社比較法やディスカウント・キャッシュフロー法(DCF法)などのことを意味しています。
なお、エンタープライズ・バリュー(EV)はこの事業価値のことを指します。EV=企業価値、との誤解がよく見受けられますのでご注意ください。
■企業価値
事業価値に、非事業用資産である投融資及び現預金を足し合わせたものです。貸借対照表の総資産に対応しそうに見えますが、実際には数値が一致しないことがあります。
■有利子負債
文字どおり、利払いが必要な負債、を意味します。金融機関からの借入、リース債務が典型例です。役員借入金はバリュエーション上の有利子負債には含まないことが一般的です。中にはしっかりと金銭消費貸借契約を締結して、利払いもしている例もあり、その場合は一見して有利子負債と考えられなくもないですが、資本金に近い性質を持つものとして、実務上は有利子負債には含まずに計算します。
■純有利子負債(NetDebt)
有利子負債から、現預金を差し引いたものを意味します。現預金の方が多い場合は「NetCash」と呼びます。日本語にすると「純現預金」ですが、実務上は「ネットキャッシュ」ということが一般的です。
■株主価値
企業価値から、有利子負債を差し引いたものを意味します。貸借対照表の純資産・株主資本に対応しそうに見えますが、実際には数値が一致しないことがあります。
なお、株式上場に関わるバリュエーションで採用されるPER倍率法・PBR倍率法・PSR倍率法は、この株主価値に該当する株式時価総額を直接的に計算する方法です。
次回も基本用語の解説を続けます。次回はEV/EBITDA倍率法に代表されるマルチプル法(類似会社比較法)に関連する用語を取り扱う予定です。
引き続き、バリュエーションの基本用語の解説です。
今回は、EV/EBITDA倍率法に代表されるマルチプル法(類似会社比較法)に関連する用語について解説します。
■マルチプル法(類似会社比較法)
マルチプル法は、他の方法に比べ比較的簡便であることから、未上場企業のバリュエーションの際に利用される最も一般的な方法のひとつで、類似会社比較法とも呼ばれます。バリュエーションの対象となる会社と類似の事業を行う上場企業を複数選定し、それらの企業の企業価値に関する指標を参考にして、対象となる会社の株主価値を算出しようとする方法です。マルチプル法にも複数の方法があり、M&AのバリュエーションではEV/EBITDA倍率法が最もよく使われます。
算出の手順を簡単にまとめると、
類似会社(上場企業)の財務数値と株価から、当該類似会社の事業価値がEBITDAの何倍になっているかを算出し、その平均値を計算します(EV/EBITDA倍率)。
対象会社の修正EBITDAにEV/EBITDA倍率を乗ずることでその事業価値を計算します。
当該事業価値に投融資(もしくは非事業用資産、事業に関係のない資産の時価のこと)と現預金額を加算し、有利子負債を差し引くことで株主価値を計算します。
という流れとなります。詳細は計算式を含め後日解説します。
■類似会社
バリュエーションの対象会社と同様の事業を行っている上場企業のことです。ただし、多くの上場企業は複数の事業を行っているため、対象会社と売上構成が一致している例はあまりありません。そのため、類似セグメントの売上割合や利益の割合なども勘案し選定します。
■EBITDA
「利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益」のことで、「earnings before interest, tax, depreciation, and amortization」の頭文字をとったものです。中小M&Aのバリュエーション上での計算式は「EBITDA=営業損益+減価償却費+のれん償却額」を使用します。費用発生時点でのキャッシュアウトがない減価償却費とのれん償却額を営業損益に足し戻すことで、簡易な営業キャッシュフロー(つまりは本業で稼ぎ出すキャッシュフロー)として捉えられるという理由や、企業ごとの会計処理に違いがあることが多い減価償却費などの影響を排除することで企業間での数値比較をしやすくする意味などがあり、EBITDAを使用します。多くの解説文では「EBITDA=営業損益+減価償却費」と記載されているのですが、M&Aが一般的になったこともありのれんの償却が発生している企業も増えたので、「EBITDA=営業損益+減価償却費+のれん償却額」と覚えておく方がより正確です。
■類似会社(上場企業)の株主価値
株式時価総額のことです。上場企業である類似会社は日々株式市場で株価が推移していますので、その株価を利用し、「株主価値=時価総額=株価×発行済株式総数」という計算式で算出します。株価は証券会社のWebサイトやYahoo!ファイナンスなどを利用して調べます。発行済株式総数は当該類似会社の有価証券報告書などで確認します。
■EV/EBITDA倍率
事業価値がEBITDAでの何倍であるかということを表す指標です。倍率のことをマルチプルと呼ぶことからここでの企業価値算定方法は実務上、マルチプル法と呼ばれます。
■非流動性ディスカウント
上場企業の株式は理論上は上場市場を通じていつでも売買ができることになっています。そのことを「流動性がある」と言います。一方で未上場企業の株式は日々取引がされているわけではなく、売買の機会は限られているので「流動性がない」と言います。このように両者の株式の換金のしやすさには差があるため、それを調整するための項目として非流動性ディスカウントが使われます。
■有価証券報告書
主に上場企業が金融商品取引法(以前の証券取引法)で開示を義務付けられている資料で、投資家がその上場企業の株式へ投資を行うか否かの判断に利用します。企業や事業の概要や、決算数値の詳細が載っているため、上場会社である類似会社の詳細な情報を調べる際に使用します。当該類似会社のWebサイトや金融庁のEDINETからダウンロードが可能です。
次回はディスカウントキャッシュフロー法(DCF法)に関連する用語を取り扱う予定です。
引き続き、バリュエーションの基本用語の解説です。今回は、DCF法に関連する用語について解説します。
■DCF法
「Discounted Cash Flow」の頭文字をとったもので、未上場企業のバリュエーションの際に利用される最も一般的な方法のひとつです。企業の価値は、その企業が将来生み出すキャッシュフローの現在価値の合計であるという企業ファイナンスの基本的な考え方に則った方法です。
なお、表記ですが実務上は「DCF法」や「ディスカウント・キャッシュフロー法」などが使われます。英語表記をそのまま日本語読みした「ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法」が使われることもありますし、稀に「割引キャッシュフロー法」が使われることもあります。
対象会社の将来キャッシュフロー予測(事業計画等から計算します)や、算定の過程で利用する株式市場の係数(βやリスクプレミアム)などの多くの前提条件の下計算を行う方法であるため、計算結果の利用方法については慎重に検討する必要があります。理論としては綺麗なのですが、前提条件次第で計算結果が大きく異なってしまうからです。
また、専門家に依頼してDCF法でバリュエーションを行ってもらった場合、専門家ごとの癖のようなものがあり、βやリスクプレミアムは精緻に計算しているにも関わらず将来キャッシュフローの予測値は結構いい加減、ということもあります。依頼する側の企業オーナーや経営者は逆に将来キャッシュフローの予測の方に重きを置く傾向がありますので、齟齬が生じやすい場面でもあります。
算出の手順を簡単にまとめると、
対象会社の事業計画(損益計画や予想貸借対照表など)から将来キャッシュフローを計算します。事業計画はすでに策定されているものがそのまま使用されることはあまり多くはなく、経営の実態や、すでに決定されている将来の事項に関することなどを反映し修正されたものを使用します。
上記将来キャッシュフローと、上場している類似会社のβ(ベータ)及び日本の株式市場のリスクプレミアムの数値等を元に対象会社の将来キャッシュフローの現在価値の合計値(=事業価値)を算出します。
当該事業価値に投融資(事業に関係のない資産の時価)と現預金額を加算し、有利子負債を差し引くことで株主価値を計算します。
という流れとなります。詳細は計算式を含め後日解説します。
■実効税率
株式会社の実質的な法人税等の税率のことを意味します。地方税が含まれるため、都道府県ごとに異なる可能性があります。また、外形標準課税の対象となる企業かそれ以外か、などの条件により異なる可能性もあります。そのように各種前提で変動するので実務上は40%や35%などの簡素化した数値が採用されることもあります。ある程度正確に知りたい場合は、顧問税理士の先生にご確認ください。
■NOPAT
「税引き後営業利益」を指す「Net Operating Profit After Taxes」の頭文字をとったものです。定義が違い用語としてはNOPLATというものもありますが、この連載の前提の下では両者は同じ意味とお考えいただいて問題ありません。
NOPATは後述のフリーキャッシュフロー算定の前提となる指標です。
計算式は
NOPAT=営業利益×(1-実効税率)
が一般的に利用されます。
■FCF
FCFはフリー・キャッシュ・フローの頭文字をとったものです。先述のNOPATに非資金費用である減価償却費及びのれん償却費をプラス、設備投資額をマイナス、運転資本増減を加算・減算して算出します。企業は自由に使えるお金、という意味の言葉であり、バリュエーションの世界では、企業の目的はこのFCFを稼ぐこと、増やすことを通じて株主価値を向上させること、となっています(あくまでも、バリュエーションの世界では、の話です)。
FCF=NOPAT+減価償却費+のれん償却額-設備投資額±運転資本増減
運転資本増減はある期の運転資本と、その前の期の運転資本の金額を比較して算出します。運転資本は、「売上債権+棚卸資産-仕入債務」で計算します。運転資本が増加するということは手元資金(つまりはFCF)が減ることを意味し、運転資本が減少するということは手元資金(つまりはFCF)が増えることを意味します。
■割引率
現在の10,000円と、1年後の10,000円が等価ではないことを例に説明されます。低金利の世の中では例として少し実感しにくくなってしまいましたが、現在の10,000円は運用して増やすことができますので、例えば1%の利回りで運用した場合、1年後には10,100円となっています。ですので、ファイナンスの世界では現在の10,000円と等価なのは1年後の10,100円と考えます。逆に1年後の10,000円と等価なのは、10,000円を101%で割った約9,900円と考えます。この1%のことを割引率と呼びます。そして、9,900円のことを10,000円の割引現在価値と呼びます。
教科書的な定義は、「将来の価値を現在の価値で表すために用いる率のことを割引率と言い、その現在の価値のことを割引現在価値と言う」です。
DCF法ではほとんどの場合、「加重平均資本コスト(Weightted Average Cost of Capital)」が採用されます。株主資本の調達コストと負債の調達コストが、それぞれ株主や債権者から期待されている割引率であると考え、それを金額割合で調整した加重平均資本コストが企業全体の割引率である、と考えます。実務上はアルファベットの頭文字をとって「WACC」と表記し、「ワック」と読みます。
計算式は
WACC₌D/(D+E)×rD×(1-T)+E/(D+E) × rE
が使われます。Dは有利子負債額、Eは株主資本額、Tは実効税率、rDは有利子負債の利子率、rEは株主資本コストを意味します。詳細は具体的計算過程の解説の際にご説明します。
■リスクプレミアム
リスクのある資産(典型的な例は株式です)に期待される収益率と、無リスク資産(日本では一般的には10年物国債です)の収益率の差を意味します。通常、投資家はリスクのある資産にはリスクのない資産よりも大きなリターンを期待しますので、リスクプレミアムは多くの場合、正の数値となります。減る可能性がある資産にはその分増える可能性があることを期待し、減る可能性が低い資産には増える可能性を求めない、ということです。
専門家でな限り、自分でリスクプレミアムを算出することは難しいため、各国のリスクプレミアムを測定し公表しているニューヨーク大学ダモダラン教授による調査結果を利用します。なお、同調査結果によると日本の株式投資のリスクプレミアムは「5.40%」ですので、投資家が日本で株式投資を行う際には、国債利回りに5.4%を加算した数字よりも大きなリターンを期待していると理解できます。
■β(ベータ)
株式市場の平均株価等が1%変化したときに、ある特定の業種の平均株価や、ある特定の企業の株価がどの程度変化するかを表す指標です。たとえば東証株価指数(TOPIX)が1%上昇したときに、ある特定の企業の株価が0.7%上昇した場合はその特定の企業のβは0.7である、と表します。
全ての上場企業にはβが存在するため、DCF法の計算過程で選んだ類似会社のβを利用するのですが、専門家でない限り自分で算出する必要はなく、金融系ニュースサイトや証券会社の投資情報ページから情報を入手して利用します。よく使われるのがReutersのWebサイトです。個別銘柄名で検索した後、「指標」のページを見ると「ベータ値」として掲載されています。
また、各国の業種ごとのβ値を測定し公表しているニューヨーク大学ダモダラン教授による調査結果を利用することもあります。
次回は、その他のバリュエーションの方法の基本用語について解説予定です。